近くて遠い、遠くて近い

近くて遠い、遠くて近い

昔の知り合い、と言っても実際に会ったことはなく二度ばかりメールをしたことがあるだけの人なのですが、そういう人から何か月ぶりかに連絡をいただいて、どうしたものかなぁと考えています。連絡といっても大したことはなくて「お変わりありませんか」程度のことなんですが、抑えた礼儀正しい文章の中で何か気持ちがこもっていて、無下にもできずどうしたものやらとんと見当がつきません。私はその人と知り合った場所からフェイドアウトしていっている途中だったので、よもや彼女が私を気にかけているとも思わなかったもので。いやぁ、それほど弱ってないけど弱ったな。

インターネット上だけの知り合い、いわゆるオン友と言う奴は不思議です。オンライン上のお友達、もっとも私は面倒くさがりでフェイスブックなどのソーシャルネットワークサービスも全然熱心にやらないので友達と呼べるほどではないのですけれど。

顔の見えない知り合いとの距離は顔の見える知り合いとの距離よりずっと測りがたいところがあります。正体を何も知らない。女だと言っているけれど男かもしれないし、20代だと言っているけれど本当は70歳かもしれない。日本人だと言っているけれどウガンダの人かもしれない。何もわからないから遠いというのが普通の感覚です。でも一方で心と言葉だけでつながっているから、オフの知り合いよりずっと近い。そういう気がするのも確かなのです。顔が見えないから、立場が知れないから言えることというのはあります。彼女は私のブログ(ただの日記ですけどね)を見てくださっていたので、よけい心が近いような気持があります。私も彼女の日記を読んでいて、感覚の近い人だなぁと思っていましたから。かっこいいとかっこ悪いのものさしがたぶん似ていて、人前でさらしていいセンチメンタルのさじ加減が似ていました。そういうのはなまじ毎日顔を合わせて挨拶する関係より、測り方のよっては距離が近いのです。偉い先生がなんというかは知りませんが、おそらくネット世代の人にはなんとなくうなずいてもらえる感じ方かと思います。顔が見えないことによるトラブルも多いですけどね。顔が見えないのをいいことに信じられない悪意をむき出しにする人もいますから、あまり情緒的になるのも考え物ですけれど。

近くて遠い、ネットの友達。

アウディA1

一六タルト

愛媛のどこかの島で生まれたある男が、会社を休んで地元へ帰りました。二泊三日。両親の機嫌をとり、地元の仲間と一度は飲んで、さて、明日からは会社という時、彼は空港で叫びました。「しまった!」お土産を忘れていたんですね。このままでは東京に帰れません。仕事を頼んできた上司のにやにや顔が目に浮かびます。夏季休暇でもなく休んでしかもお土産もなし、となったらどんな嫌味を言ってくるかわかりません。そこで彼は空港内をきょろきょろと見回し、「一六タルト」を選びました。

「一六タルト」というのは愛媛のお土産としてはもっともポピュラーと言っても過言ではないお菓子です。カステラと同じ記事でゆず風味の餡をロールしてあります。一六本舗という会社が作ってるんですが、松山銘菓ということで空港でもデパートでもどこでも買えます。

私、今回お土産で一六タルトをもらうまでタルトは洋菓子だとばかりに思っていましたら、どうもタルトには二種類あるようです。一つは私のイメージそのもののタルト、ですね。ビスケット的な生地の上にフルーツやクリームやらをのせたお菓子です。洋ナシのタルトだとか林檎のタルトだとか、その類です。もう一つが一六タルトなんかにあたる郷土菓子のタルトです。これは、長崎から伝わったそうです。南蛮菓子(この言葉も日本史風で味がありますね)の中にロールケーキのようなものがあって、これにいたく感動した松山藩主が伝えたのだとか。なるほど、たしかにロールケーキにそっくりです。洋菓子のタルトとは見た目がまったく違うので一体何故この二つが同じ名前を?と思ってしまいますが、語源は両方とも同じらしいですね。

郷土菓子、というのはお土産用に作られているお菓子らしいのですが、日本人はそういうのが好きですよね。どこへ行っても買ってしまいます。大抵おいしいのですけれど、中にはおいしくなかったり恐ろしく食べにくかったりするものもありますが、このタルトは個人的には大変おいしいと思いました。ネット通販で買おうとは思いませんでしたけれど、誰かがいらないと言ってくれたらおいしくいただけそう。愛媛の島出身の男性から聞いた話では、スポンジ部分にバターが使われていないのだとか。ありがたいお話です。