ドラマ「黒革の手帖」

ドラマ「黒革の手帖」

連続ドラマは普通、ワンクールで大体13回です。この内、初回と最終回は大体拡大スペシャルを行います。さて、文庫にして上下二冊に分かれる程度の長さの小説をワンクールのドラマにしようとしたら一体どんな工夫が必要でしょうか。

というのは、先日松本清張の小説「黒革の手帖」を読みまして、それが面白かったので職場の先輩に言いましたらドラマが面白かったから見てごらんとすすめられたんですね。で、ドラマを見てるんですけど、なんというか小説から入りましたから「ははぁ、そう来ますか」と思わされる事が多いわけです。2004年版のドラマは全7回なんですけどね。

まず、キャスティング。原口元子は原作の描写だと決して美しい女ではないことになってるんですが、米倉涼子ですからね。THE迫力美人。まだ私はドラマを全部は見ていないんですけど、後半「あんたみたいなブスに惚れる男がいるわけないでしょ」とかってののしられるシーンがあるんですが、これ、どう処理するんでしょう。およそ世の中に米倉涼子相手に「ブス」なんて言える人間がいるでしょうか。まず言えないと思います。彼女が美人じゃないというなら一体誰が美人なんだ?でも彼女はこれがあたって翌年も同じ役を、舞台でも同じ元子役をやってるんですからドラマがよかったんでしょう。なんとか処理してるんでしょう。

連続ドラマなので主人公のキャラを深めに描く、というわけで、原作にはないんですが元子の過去の様子や母親の様子なんかが出てきます。そして、第一回の銀行のお昼のシーンでは同僚の女子行員たちに虚言の気がある、ということでバカにされて陰口をきかれています。「ハワイ土産だと言ってチョコレートを配っていたが、本当は国内のデパートで買ったのではないか」というようなことを言われて笑われているのを見ると可哀そうで可哀そうで。たまにそういう嘘つく人って本当にいますからね。行ったのに行ってないという嘘をつく人より、行ってないのに行ったと嘘をつく人のほうがずっと悲しい。きっとこのハワイのチョコのシーンも、これから原口元子が色々悪い事をしていきながらも視聴者の好感を失わないための対策でしょう。人はかわいそうな人を嫌いにはなれません。だから主人公を好きになってほしければどんどんかわいそうな目にあわせればいいと聞きます。しかし、見るのがやめられません。さすがにヒット作ですね。恐るべし。

リクルートスタッフィング

皇帝のかぎ煙草入れ

「皇帝のかぎ煙草入れ」を読みました。ジョン・ディクスン・カーの有名作です。このジョン・ディクスン・カーという人、よく本の後ろについている著者の写真で見るとちょび髭を生やして髪を油で撫でつけて、スーツを着て、何の効果を狙ったんだか斜めに寄りかかったような姿勢で写真をとっていて、写真だけ見るといかにも作家気取りで腹が立たないこともないのですが、しかし「密室の王者」と呼ばれるほど密室には強いお人なのです。えぇ、なんだか、どうかと思う響きではありますけどね、密室で一体何をやったんだ?みたいな。

「皇帝のかぎ煙草入れ」はアガサ・クリスティーもドロシー・L・セイヤーズ(イギリスの有名な女性推理小説家です)も絶賛している作品で、別に皇帝はでてきません。普通に作者が書いた時代と同時代のフランスを舞台とした作品です。ちなみに皇帝とはナポレオンで、このナポレオンが使っていたとされるかぎ煙草入れが作品の中に出てくるんですね。

あらすじはこうです。イヴという名前の美しい女性は婚約中です。かつて彼女はネッドという名前のイケメンだけれどろくでもない男と結婚していたんですが、離婚しまして、今度はちょっと堅物な銀行員のトビイという男と婚約したんです。ところが、ある晩、別れた旦那のネッドが部屋へやってきたんです。午前一時です。新しい婚約者のトビイ一家とは狭い通りを挟んで向かいに住んでいます。こんな時間に分かれた男が部屋に来ているのを見られたら何と思われるか知れたものではありません。イヴはネッドを追い出そうとするのですが、そこでネッドが叫び声をあげます。向かいの家で老人が、トビイの父親のサー・モーリスが何者かに撲殺されているのが見えたというのです。そして恐ろしいことにイヴにはこの老人殺しの容疑がかけられます。

よく読んでみると、最初からかなりヒントがちりばめられているのがわかります。正直なところ、推理小説のトリックも出尽くしたような今から考えるとけっこうわかりやすいのですが、きっと出てきた当時は珍しかったのでしょう。犯人を見破ろうと思ってゆっくり読んでいくとちゃんと犯人がわかるフェアな話ですので、是非探偵になったつもりでお読みください。